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本学会長から会員のみなさまへ

 アジア災害トラウマ学会、会員の皆様、また私たちの学会にご賛同いただき、関心を寄せてくださっている皆様、こんにちは。  おかげさまで、アジア災害トラウマ学会は、その前身の「日中災害事例研究会」の設立から今年で16年を迎えることとなります。

 2010年の3月に設立された「日中災害事例研究会」は、次の三つの大きな目標を掲げていました。

1 災害後支援の経験の共有と理論的深化

世界各国の災害後の様々な事例とそれへの援助の経験を報告しあい、情報を交換し、経験を共有する。そして、その事例をめぐる会員相互の討論によって、援助の経験を理論的により深化させ、豊かなものとしていく。

2 経験の理論的発展と適用領域の拡大

災害後支援の経験を、災害以外の外傷的な体験、例えば事件、事故、争乱による被害、家庭内での虐待や学校でのいじめの被害などにも適用し、「こころのケア(心理支援)」の理論をより拡大発展させていく。

3 経験の蓄積と活用

心理的、教育的な支援によって、被災者、被害者が災害やその他のトラウマの心理的影響から回復していく過程を記録し、支援経験の蓄積を行い、今後の他地域での自然災害、人為災害に対するこころのケアに役立てていく(心理支援の観点)。またより一般的に、わたしたち人類が自然的、人為的災害に対処しながら生きていくための心構えを、強く確実なものにしていく(防災教育の観点)。

 このような目標のもと、2010年に中国四川省綿陽市で始まった研究会は、その後中国各地さらに台湾の台北市でも開催され、各大会ことに参加者も増加し、報告された研究や実践の内容も大会ごとに深化し、アジア地域でのこの領域での学問的な活動に一定の役割を果たせてこられたのではないかと自負しています。

 しかしながら2019年に私たちを襲った新型コロナ感染症は、私たちの国境を超えた繋がりの機会を不可能とし、せっかく蓄積してきた人的繋がりや広い学問的成果を足踏み状態にしてしまったと言わざるを得ません。新型コロナ感染症によって私たちの生活が根底から大打撃を受けた時、私たちは感染症も自然災害の一種であると位置づけ、それに対抗し、その中で生き延びるための様々な手立てを考えるために、onlineでの研修会を企画し、実際に国境を超えた多くの方々の参加する研修会を企画実現し、それは感染症に対抗するための一つの成果だったのてはないかと考えてはいます。

 しかしながら、この感染症によって、私たちの学会自体が大きな打撃を受けたこともまた事実であり、定期的な対面による学会の開催、そのための会合の実施が不可能となり、それによって日常の事務的な業務が滞ってしまったこともまた報告しておかなければなりません。これは私たちの学会の基盤のもともとの脆弱性によるもので、その責任は私をはじめ現行の学会の運営を担っている理事一同にあることは言うまでもなく、それについては深くお詫び申し上げます。

 そのような状況の中で、それでも定期的な毎年の学会の開催はなんとか維持し、コロナ以降の久々の開催となる一昨年はマレーシアのジョホールバル市で第15回大会を、また昨年は中国成都市で第16回大会を開催することができ、アジア全体にその活動の幅を広げていく端緒になればと様々な計画を立てていました。しかしながら昨今の不安定な世界情勢の中で、今年度予定していた中国での開催は不可能となってしまいました。現在の世界の不安定さは、国際学会を運営している私たちにとっては、新型コロナ感染症に匹敵する重圧であることがひしひしと感じられます。それでも、世界が内向きのベクトルに満ち溢れているこんな時にこそ、私たちは国境を超えた人々の結びつき、絆を深めていかなければならないと考えています。

 コロナの経験を経て、今この不安定な世界の中でそうした活動を継続していくには、学会そのものの基礎体力をより強固にしていく必要のあることを痛感しています。そのために、私たちは、次の二つの柱を中心に、学会活動の再活性化を図っていく所存です。

 1 学会のコアとなるメンバーを確立し、日常的な研究、研修会活動を増やしていく。

 2 そうした研究、研修活動の成果を目に見えるものとするために、成果の発表の場とし

てのonline学会誌を提起的に刊行する。

 どうか以上の趣旨をご理解の上、学会員としての再登録にご参加いただき、アジアトラウマ学会のさらなる発展のためにお力をお貸しください。


アジア災害トラウマ学会 会長 高橋哲

 

 
 
 

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