2020年2月23日13:00~16:00(日本時間)12:00~15:00(北京時間)
主催;アジア災害トラウマ学会
会場;人と防災未来センター東館4階 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科・中会議室
新型コロナウイルス感染症対策での心理援助・心のケアのシンポジウムをWEB会議により開催しました。中国心理専門家・日本心理専門家93名がWEB会議に参加しました。
みなさんのスピーチを要約して伝えます。
◇まずは、二人の中国からの留学生がスピーチをしました。
◆王思さんは立命館大学の大学院学生で、武漢出身です。「武漢の家族のことが心配でたまらない。時々電話をかけ、もしでないとき、なにかあったのかと心配になります。お母さんは毎日家を消毒していますし、眠れていません。感染のニュースをみすぎないように言っています。いつまでつづくかわからなくて、とても不安になっています。」と。
本学会の理事の春原さんは、王さんにねぎらいの言葉をかけたのちに、「進行形の災害であるということ。ウイルスという目に見えないのが敵。終わりのみえなさが不安を増強していると思います。みえるものをふやして、情報を共有して、みんなの知恵を集めることで不安を小さくできると思います」とメッセージを送りました。
◆陳婷婷さんは立命館大学の大学院生で、浙江省温州出身です。12月に帰省したのち、日本に戻れなく、中国からスピーチをしてくれました。「2月1日から温州は封鎖され、外出禁止になりました。家族は買い物にいかなければならないので、とても心配です。いつ日本に戻れるのか、将来が不安です。家族の仕事が今閉業していて収入がなくなるのも心配です」と。
本学会理事の竹内さんは「いつも通訳をしてくれてありがとう。みんな状況が読めない中とても不安だと思います。日本でもどの情報が本当なのかもわからないなか過ごしています。温州の陳さんと話せて、大変さを一緒に共有できたと思います。日本と中国がはやく行き来できるようになれるように願っています」と。
◇14:00から15:30まで6名の中国心理専門家が現状と計画を話しました。
◆呉薇莉教授(四川省・西華大学)「1月24日プロジェクトを開始し、25日にスタートしました。2つ配慮をしました。1)四川大地震とちがって対面的な心のケアを行うことができないのでオンラインで行うことにしました。2)四川大震災の教訓で、いろんな人が援助しようとしていますので、各リソースを統合しました。3)Onlineの内容はハンドブックや絵本を作りました。新型コロナは、進行形で、持続的で、予期できません。各リソースを統合することが重要です。
◆陶新華教授(蘇州大学)「1月24日、武漢から帰ってきた人のなかで検査に協力しない人がいました。協力しない人は警察に連行してもらいました。今は感染者の増加はゼロです。2月2日、蘇州、ボランティアを募集し、各リソースを統合しました。ハンドブックを医療従事者向けに、そして企業の従事者への心のケアのハンドブックを発信しました。中小学生に向けの本も発信しました。蘇州大学の先生らとも大学生向けに発信しようとしている。ホットラインのトレーニングを行ってきました。」
◆万瑛さん(武漢・音楽学院;武漢心理援助チーム)
「武漢の封鎖から1ヶ月です。とてもつらい一か月でした。
1)外にでないこと。
2)デマ情報を識別すること
3)助けを求めることを恥じと思わない・専門家による援助も。
リソースを統合しました。スーパーバイズを行っています。高校、大学への心理援助を行っています。80か所の心理師。220名のボランティアがいます。ホットラインを開設しています。心理師の活動倫理のトレーニングをしました。武漢封鎖10日間。コロナウイルスの知識を求めた相談が多かったです。つぎに、生活をどう送ったらいいか。日常生活の不安。メンタルヘルスの問い合わせも多かったです。これからグリーフケアの研修も行います。
中国の各地域、国外から支援に感謝します。日本からの支援は漢詩を支援物資に書いてくれました。大変感謝しています。
◆祝卓宏教授(中国科学院心理研究所)
1月25日から6つの活動を行ってきた。
1)1月27日、ONLINE心理グループ。40311名ボランティア。医療従事者。141万、身体症状、新型コロナについての問い合わせがありました。
2月1日。18093名。30301回の問い合わせ。午後6時までのデータ。6000回のアセスメント。感染者・疑似、心配している方。
2)中国網により一般人向け講座を行いました。268万回の視聴。3つの学会がスタート。
3)ホットライン;入院患者・医療従事者向け。まだ。
4)心理援助のボランティアへの研修、13回の危機介入、8万人参加。
5)企業従業員を対象にあさってから研修。
6)中国心理学会、安心プロジェクトを発足しています。リソースの統合が重要です。
◆隋双戈先生(深圳)
25人を対象にしたWEB上の集団心理援助を紹介します。
第1;問題点をみつける;肺炎のはやった後の心の変化 苦痛度を0-10で尋ねます。
第2;情報提供;眠れない不安;正常の反応と教える、ほっとする、状況は変化していく
新型コロナウイルスの情報提供。うつされることが心配です。どんなことをすれば うつらない、うつさないかを伝えます。感染症の状況を伝えます。治癒率も上がっていることも。
第3;ストレス対処;自分ができること、パニック、不安、を緩和します。
第4;まとめ(話し合いによって参加者が気づきを得られます)
◆沈振明院長( 唐山市精神衛生中心)10月末に予定している第12回アジア災害トラウマ学会大会の主催者として感染症について話されました。
感染症が流行しはじめたあとの唐山での活動。
1)病院のスタッフによって、ホットラインを2つほど開設しています。
2)入院患者を対象にアセスメント、介入をしています。感染病棟に10名医療スタッフが専従しています。医療スタッフへのリラクセーション、傾聴を行っています。
3)退院後のフォローアップ支援をしています。退院しても自宅隔離です。電話を通してフォローアップしています。病気だけでなく社会生活、ストレス、スティグマ、差別されるのではという不安の相談を受けています。
4)医療従事者への支援:電話とWechatなどONLINEツールを使って支援しています。医療従事者には心身の疲弊が溜まっています。
5)武漢への派遣チームへの支援:派遣チームのメンバーは緊張感が高い。電話・Wechatを使って支援しています。家族への支援も行っています。
6)一般人への心理教育:冊子、テレビ、ラジオを通して、毎日市民に発信しています。
◇15:30から16:00 日本側コメント
◆高橋哲会長「みなさんの貴重な経験をありがとうございます。呉先生は対面が使えないときの工夫を話してくださいました。陶先生・万先生は実際活動している人の生々しい経験を教えてくださいました。祝先生は中国科学院心理研究所の壮大な取り組みを紹介していただきました。隋先生は心理教育の重要性をお話しくださいました。沈先生は退院したあとのスティグマに対する支援をお話しいただきました。
3つのことをお話しします
1)中国から学ぶ
対面でない面接のさまざまな取り組み;どういう事例が困難であったか。
AI心理援助を教えてほしい。免疫力を高める。重要なポイント。太極拳。ストレスマネジメントの方法。病気についてさまざまな知識を知ってもらう。ストレス対処法と心理教育を組み合わせたストレスマネジメントが重要についてもっと知りたいです。
2)世界へ広める
Covid19世界的な問題です。日本、シンガポール、韓国などのアジア諸国と体験を蓄積し共有していきます。
3)日本でも取り組みます
ONLINE相談の体制を整えたいが、本学会には力がありません。でも日本でも取り組んでいきます。
◆黄正国さん(広島大学);実のある会議でした。留学生の二人の声は貴重でした。当事者の視点と、その人のストーリーが大事です。事例を慎重に検討していくことを通して、支援の在り方について検討していく必要があります。また、ウイルスはみえないので恐怖を感じます。それは人間関係、世界観へも影響を及ぼします。心理援助の力はとてもかぎられています。医学、社会福祉と連携をとることが大事です。
通訳は唐姸さん(中国蘇州工業園区仁愛学校)、劉強さん(立命館大学)がつとめてくれました。
サンテレビ取材記事(Yahoo!ニュース)
「新型コロナウイルス 心のケア考えるシンポジウム」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200223-00010002-suntvv-l28
「サンテレビNEWS」2020年2月23日(日)
Comments